2019   2018   2017   2016   2015   2014   2013   2012   2011   2010   2009   2008   2007   2006


2007.3.6  「平成18年度後期 研究報告(7)」   田嶋 陽子、小林 恵

2007.2.27  「平成18年度後期 研究報告(6)」   久保 和也、山本 貴

2007.2.13  「平成18年度後期 研究報告(5)」   田村 雅史、芦沢 実

2007.2.6  「平成18年度後期 研究報告(4)」   江田 潤哉、池田 陸

2007.1.30  「分子性導体のμSR測定」  河村 聖子氏 (お茶の水女子大学 理学部物理学科 古川研究室)
ご存知のように、低次元性をもつ分子性導体の多くは強相関系であり、その伝導性(超伝導の発現機構など)を理解するには、磁性との関連性を明らかにすることが重要です。一方、ミュオンスピン回転・緩和(μSR)測定は、電子スピンのゆらぎや磁気構造の変化を、高感度でとらえることができる微視的観測手段で、ビームを照射しても試料にダメージを与えないというメリットもあります。
セミナーでは、私が理研の岩崎先端中間子研究室に在籍していた、昨年7月までの4年間に行ったμSR測定のうち、分子性導体に関するものを、Pd(dmit)2塩の磁性研究の結果を中心に、報告させていただきます。

2007.1.23  「人に優しい有機トランジスタ」  池田 陸
近年、有機半導体の研究が盛んに行われています。
有機半導体には、Si半導体に比べて低速ではありますが、曲げられる、大面積品を低コストに製造できる、といった特徴があります。 こうしたSi半導体では実現が難しい薄くて、軽くて、柔らかいエレクトロニクスという特徴が、人々の安心・安全かつ豊かな生活を実現する役に立てば一番です。
今回、障害を持っている人もお年寄りも私たちも、より使いやすく楽しく生活をおくる事ができるかもしれない有機トランジスタを用いた人に優しい研究を紹介します。

2007.1.16  「平成18年度後期 研究報告(3)」   高坂 洋介、川椙 義高

2006.12.19  「平成18年度後期 研究報告(2)」   清水 康弘、田嶋 尚也

2006.12.5  「平成18年度後期 研究報告(1)」   石井 康之、深谷 敦子

2006.11.21  「擬一次元有機伝導体における圧力誘起超伝導体の探索 Superconductivity in Quasi 1-D Organic Conductor under High pressure」  ベルサイユ大学 糸井 充穂 研究員
1980年に(TMTSF)PF6において初めての有機超伝導が観測されてから、一次元有機伝導体(TMTCF)2X (C = S and Se)の示す多彩な圧力下の物性は、現在に至るまで、多くの科学者を魅了してきた。
1991年に(TMTTF)2PF6を含めた圧力下の電子相関図が提唱され、一連の物質がspin-Peierls (SP)からSDW相を経て超伝導を起こすことが予測された。そして近年、有機物質の分野において超高圧下測 定が浸透し、Diamond anvilやBridgiman anvilなどの圧力発生技術の進歩とともに、約5GPaの圧力下で(TMTTF)PF6の超伝導が観測され、Jeromeによって提唱された圧力相図の正当性が証明された。
更に大きなanion をもつ(TMTTF)2X(AsF6およびSbF6)の超伝導は未だ発見されておらず、これらの物質の超伝導探索には5GPa以上の超高圧が必要であることが予測される。また結晶が柔らかく、強い異方性を示す(TMTTF)2Xには、良質な静水圧力が必須である。そこで我々は10GPaまで良質な静水圧を発生可能であり、数々の柔らかな有機物質に対して実績のあるcubic anvil装置を用いた超高圧下電気抵抗測定から一連の(TMTTF)2X(PF6, AsF6, SbF6)の超伝導探索を行った。
今回は(TMTTF)2X(PF6, AsF6, SbF6)の超高圧力下における電子相関について報告する。

2006.11.14  「光誘起相転移現象の精密な時分割構造解明を目指して」  理研播磨研究所 高田構造科学研究室 加藤 健一 研究員
光誘起相転移現象の機構解明には、その構造変化をピコ秒オーダーでのスナップショップとして’直接見る’時分割構造解析が強力な手段のひとつであると考えられている。我々は、SPring-8の40ピコ秒分解能のパルス特性と、独自に開発したマキシマムエントロピー法による電子密度マッピングの方法を最大限に活用するための時間分解回折実験システムの開発を行っている。
セミナーでは、これまでの光誘起相転移物質の電子密度レベルでの構造研究の結果とともに、ピコ秒時間分解回折実験の開発状況について報告する。

2006.11.7  「金属錯体や有機金属化合物の使い道」  久保 和也
金属錯体の研究は、これまで主にその構造的あるいは分光学的な特性を検討することにより、大きく進歩してきた。また、有機金属も有機合成の触媒など工業的に非常に重要な化合物である。このように、金属錯体や有機金属化合物は、これまでの化学の進歩に大きく貢献してきたことは間違いない。
では、今後これらの分野は、どのように展開していくのであろうか。これまでと同じ研究を繰り返していたのでは、これらの分野の衰退は間違いない。
そこで、本セミナーでは、これら研究分野の有用な展開例として金属の配位能力や有機金属の触媒能を活用し、金属あるいは酸化物基板上に、有機物の薄膜あるいは配位化合物の薄膜を作成する技術を紹介する。

2006.10.31  「含高周期14族元素の多重結合化合物−single,double,triple,いつかはNobel?−」  小林 恵
炭素・酸素・窒素といった第二周期元素を中心とする物資群の化学は、有機化学として長い歴史を持っている。これら第二周期の元素は通常の単結合に加えて、二重結合や三重結合といった多重結合を容易に形成するため、有機化学に多様性をもたらす一つの要因となっており、その性質を利用して医薬品合成、合成高分子、機能性有機材料など様々な応用研究がなされてきている。
一方、周期表上での同族元素は性質が似ていると考えられていることから、第二周期元素と第三周期以降の典型元素(高周期典型元素)との類似点や相違点について非常に興味が持たれ、精力的に研究が行われている。特に、高周期典型元素を含む多重結合は一般に極めて不安定で、近年まで安定に合成することは困難であった。しかし適切な合成手法を用いることで、こうした多重結合化合物を安定に合成・単離することが可能となり、新たな物性・機能化学へと展開しつつある。
今回は、高周期14族元素(ケイ素・ゲルマニウム・スズ・鉛)を中心とした多重結合化学種の合成と、その構造や性質について紹介する。

2006.10.24  「非X線的な軸決定法」  江田 潤哉
一軸性ひずみ効果を行うにあたってはもちろんのこと、物性測定において、結晶軸を決定することはきわめて重要なことである。
現在は、X線で結晶の外形と軸の関係を決め、測定するサンプルはその関係に従う方法をとっている。この方法では、測定を行う結晶一つ一つを調べることができない。 X線がまだ手身近な実験で無かった頃、金属結晶の軸を決めるために非X線的な軸決定法がいくつも考えだされている。
今回その中の一つである光像法を取り上げる。最後に分子性導体に応用した結果を紹介する。

2006.10.17  「光電子分光による分子性導体のEF近傍の電子状態」  木須 孝幸
光電子分光法は物質内部の電子の束縛エネルギーを直接知ることのできる実験手法であり、更に放出光電子の角度を測ることによって、電子の物質内部での束縛エネルギーと同時に運動量(バンド分散)を知ることができる唯一の実験手法である。光電子分光による分子性導体の研究は、電気的物性に非常に大きな影響をもつフェルミ準位近傍に関しては全く行われてこなかった。
われわれは、分子性導体の電子状態を超伝導を示すk-型ET塩について超伝導ギャップの直接観測を試み、分子性導体における光電子を行う上で、必ず抑えておくべき電子相関が小さく金属的な系である(ET)3Br(pBIB)について研究を行い、角度分解光電子分光にも成功し、NIMSの宮崎さんに第一原理の計算を行っていただいた。
発表では光電子分光についてできるだけわかりやすく説明し、これらの結果の報告および比較と、光電子分光の対象物質をより広げるため、現在建設を行っている新しい光電子分光装置についても紹介を行う。

2006.10.10  「これ知っ得!?:配向 〜動かないなら並べてみよう有機分子〜」  芦沢 実
有機半導体分子を使って分子デバイスを作ろうと考えたときに、例えば太陽電池でも電界効果トランジスタにおいても有機分子をいかに並べるかが、デバイス特性向上の鍵となる。
今回は1つの実用化の成功例として液晶という機能を持つ有機分子に着目し、その基本となる性質やデバイス作成工程において注意すべき点などを抽出して紹介し、今後の展開に役立てる。

2006.7.25  「平成18年度前期 研究報告(2)」   高坂 洋介、江田 潤哉、池田 睦、川椙 義高

2006.7.11  「第一原理計算と多体モデル計算による有機導体の物質設計にむけて」  有田 亮太郎 研究員(古崎物性理論研究室)
第一原理計算とモデル計算を組み合わせた有機導体の物質設計を考えたとき、もっとも重要なステップの一つに有効ハミルトニアン中の相互作用パラメータの精密な評価がある。
一見non trivialな電荷秩序のパターンや超伝導のペアリング対称性などもモデルの中の相互作用パラメータの値を調整することで実験と整合するストーリーを作ることが可能となる。このことをtheta型ET塩を題材に議論する。有機導体における多体効果に対する理論的研究としては、理論にいくつかの不定のパラメータを含ませて実験と合致するようにそれらを調整する「パラメータ物理」的なアプローチが多いが、このようなアプローチには予言能力がなく物質設計には不向きである。
これまで有機導体のような分子軌道をベースとする物質に対して第一原理的に相互作用パラメータを評価する研究がなされてこなかったがこの問題の背景と、それを克服する試みを紹介する。

2006.6.27  「平成18年度前期 研究報告(1)」   石井 康之、深谷 敦子、田嶋 尚也、山本 浩史

2006.6.20  「静水圧下における擬2次元金属(BEDT-TTF)3Cl(DFBIB)に対する横磁場効果」  川椙 義高
(BEDT-TTF)3Cl(DFBIB)は伝導層と絶縁層が交互に積み重なった構造をしており、積層方向の電気抵抗は面内方向に比べ約1000倍大きい。このような擬2次元フェルミ面を持った物質に面間電流を流したとき、低温における横磁場磁気抵抗が磁場の2乗に比例するということが理論、実験の両面から明らかになっている。このときの傾きは系の3次元性に関する情報を含んでいる。
本研究では静水圧下で系の3次元性がどのように変化していくかを磁気抵抗から調べた。

2006.6.13  「有機結晶作製について」  高坂 洋介
結晶作製は、科学や工学そして物質を製造する上でも非常に重要な手段である。我々は有機物の結晶作製を常日頃から行ってきているが、経験則に頼るところが多く、理論的なアプローチは意外にも少ない。また、結晶化についてまとめた文献などもあまり見あたらず、作業が難航した場合の拠り所がないのが現状である。
そこで、理論的な面を歴史的な背景などと共に見ていき、結晶化における様々な要因を紹介するのが本セミナーの目的である。併せて技術的な部分にも触れる予定である。

2006.6.6  「重い電子系における非フェルミ液体」  清水 康弘
物質中で電子は、場合によって波として振舞ったり、粒子として振舞ったりする。これは量子力学から自然と導き出される結果であるが、多体の相互作用が顕著になると、単純な金属や絶縁体のモデルでは説明できなくなる。そのため酸化物、分子性導体、f電子系で見られる超伝導、金属-絶縁体転移、非フェルミ流体といった現象の統一的な理解は、20世紀後半からの最大の固体物理の難問であり続けている。それらの現象は、電子の電荷とスピンの自由度が遍歴性(波)から局在性(粒子)へと変化する過程、つまり量子ゆらぎの強い量子臨界点で起こっているという考えが広まりつつある。
本セミナーでは、重い電子系とよばれるf電子を含む化合物における異常な金属について紹介する。そのために、まず基本的な量子論から出発して、フェルミ液体の概念を導入する。さらに、局在電子と遍歴電子との相互作用を表す、RKKY相互作用と近藤効果について解説した後、これらが競合する量子臨界点において見られる非フェルミ液体について述べる。

2006.5.30  「スピンパイエルス転移とその周辺」  田村 雅史
1. 1D電子系のパイエルス不安定性(Nesting)
2. 1Dスピン系
3. Jordan-Wigner変換
4. 実験例
5. 仲間の1D系非磁性基底状態
6. 2D系

2006.5.23  「ホール効果のすすめ:初級〜中級偏」  田嶋 尚也
無冷媒式7T-スプリットマグネットが新たに設置され、磁場下での物性測定(電気伝導性)が容易にできるようになった。有機導体ではあまり調べられていないが、電気伝導性の基本的な性質を知る1つの手段にホール効果がある。
今回のセミナーでは測定系になじみがない方にもホール効果に興味を持ってもらうことが第一の目的である。内容は基本的なこと(ホール効果から何がどこまでわかるのか)、幾つかの測定例、ホール効果を応用した例について触れる。最近ではホール効果を使って非破壊検査も行われているようである。

2006.5.16  「希薄にホールをドープした La2-xSrxCuO4 の不純物効果」  深谷 敦子
La2-xSrxCuO4 は最もよく知られている高温超伝導物質の1つである。この物質の性質は、超伝導の出現するホール濃度 x=0.1-0.2 付近については広く研究されているが、希薄にホールをドープした組成については、あまり注目されてこなかった。
最近、x=0.01 付近の試料に少量のNiをドープすると、ネール温度が回復するという興味深い現象が起きることが明らかになった。私の所属していた山田グループでは、この現象を中性子散乱とミュオンスピン緩和で調べた。セミナーでは、試料作成方法などについても紹介する。

2006.5.9  「量子化学計算:分子から固体へ」  山本 貴
化学の分野で理論計算と言えば、原子軌道(AO)から積み立てる方法が一般的である。一方物理では逆格子空間からアプローチする。前者は、密度関数論の下で、相関交換相互作用をうまく取り込むことができる。しかし、大きい系は不得意である。後者はその逆である。
今回は化学屋が賞用する手法を小さな分子から結晶へ適用した例を紹介する。測定可能量である結晶の因子群分裂との比較等を交えて紹介する。

2006.5.1  「双安定抵抗素子」  山本 浩史
近年2つの安定な抵抗状態を示す素子が注目を浴びている。
我々分子性導体の分野ではK・TCNQの双安定状態やθ−CsCoを用いたサイリスタが知られているが、無機物の分野ではより応用的な側面からのアプローチが盛んで、シャープ・サムスン・富士通などがRRAM(抵抗変化型ランダムアクセスメモリ:resistive random access memory)の開発を始めているほか、インテルは同じような動作をするPRAM(相変化型ランダムアクセスメモリ)をOMUという名前で製品化しようとしている。
今回はこのような産業界の状況も含めた双安定素子の現状について紹介する。

2006.4.25  「遍歴電子の磁性−遍歴メタ磁性を中心として」  石井 康之
「鉄やニッケルのような、金属の強磁性がなぜ実現するのか」という問題は、「高温超電導体がなぜあの様に高い転移温度を持っているか」という問題と類似して、理論的には完全に決着していない物質科学上のハイライトのひとつである。
この金属強磁性の問題に関連して、遍歴メタ磁性体と呼ばれる物質群がある。これらの物質は、基底状態は常磁性の金属であるが、通常の金属と異なるのは磁場を印加してゆくとある磁場で突然磁化が増大し、金属強磁性の状態になる点である。しかも、その転移はヒステリシスを伴った一次転移である。
今回のセミナーでは、この遍歴メタ磁性体の特徴的な物性を紹介する。